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男性未妊と鍼治療 |
鍼治療を通して私が調べたこと、感じたことを書いてみました。
当サイトや他のサイトなどを閲覧されて鍼治療に通ってみよう、と思っている方がいらしたら
メリットもデメリットも合わせて考えていただければと思っております。
以下の記述は私の主観もかなり入っていますし、効果については個人差があると思います。
それを前提にご参考にして頂ければ幸いです。 |
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きっかけと経過 |
大学病院でのTESEの予約をした際に、術日まで約半年の待機時間がありました。
非閉塞性無精子症の場合、薬によるホルモン療法などは
効果がほとんど認められないことから特に内科的治療を行わず、最初から外科的治療法の
TESEをするというお話しでした。
そこで、何もしないでオペに臨むよりも何かしら民間療法でもかまわない、
少しでも今の状態が改善できるチャンスがあるのならやってみようと思い立ち、
ある治療院へ鍼治療に通うことにしました。
治療を受けるに当たって、治療院と話し合い、当初予定していたTESEをキャンセルし、
ある程度の経過を経て、どうしていくか治療院と話し合っていくということになりました。 |
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結果 |
約8ヶ月近い通院をし、その間に2度にわたるホルモン検査、1回の精液検査を行いました。
性腺ホルモンや男性ホルモンについては、改善されましたが、
射精精液中に精子が認められることはありませんでした。
その後、TESEを行った結果、精巣内にも成熟精子はおらず、
未熟なステージの後期精子細胞のみが発見されました。
※ ホルモン検査の結果の詳細は二人のあゆみの検査結果の記録に載せています。 |
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男性未妊改善と鍼治療についてのリサーチ |
鍼治療に通ううちに、治療院側の言い分だけを鵜呑みにするのではなく、
実際、未妊治療の世界ではどんな位置づけをされているのか知りたくなり、調べてみました。
アメリカの生殖医療専門誌である「Fertility and Sterility」という専門誌に、
ドイツとイタリアの調査結果によると、鍼灸治療を施すことにより男性未妊に効果を発揮する
可能性があるという記事が発表されました。
この記事によると特発性乏精子症・精子無力症・奇形精子症であると診断された
男性28人に5週間の間、週二回の鍼灸治療を施したことにより、
正常精子の増加が確認されたそうですが、未成熟精子(精子細胞のことだと思います)や
死滅精子などに関しては、鍼治療の効果は確認できないという報告になっていました。
※ 記事の詳細はこちらを参照してください:
「Quantitative evaluation of spermatozoa ultrastructure after acupuncture treatment for idiopathic male infertility」
http://www.fertstert.org/article/PIIS0015028205005911/abstract
このような調査結果を考えると鍼治療はあらゆる男性不妊に効果があると言い切れないと
思われます。
また、その記事では今後もリサーチを続けると結ばれておりますので、
まだはっきりとかなり高い確率で「効果あり」とは言えない段階なのかもしれません。
我が家の場合は主人のホルモン環境の改善に関しては効果があったといえると思います。
しかし、ホルモン環境は多少改善されたとはいえ、
残念ながら射精精液中にも精巣内にも成熟した精子を認めるには至りませんでした。
確かに一部の非閉塞性無精子症の方で鍼治療を行ったことにより、
射精精液中に精子を認められた方もいらっしゃるようです。
しかし、射精精液中に精子を認められるに至る可能性は、
私たち夫婦が通っていた治療院では「5%」の確率でしかないと仰っていましたので、
非閉塞性無精子症の方が鍼治療を行うことによって、射精精液中に精子が認められる
レベルにまで改善できるということは、極めて稀なケースであると言えると思います。
もし、仮に鍼治療を行った上で射精精液中に精子が認められたとしても、
通院先であった治療院の説明では、自然妊娠が出来る可能性は限りなく「0」に近く、
ARTの助けが必要不可欠であるとも聞いています。
理由ははっきりとした説明がなかった為、精子の運動率がよくないのか、
それとも精子濃度が自然妊娠に至るまで回復できていないからか、
それ以外の理由があるからなのかは分かりません。
また、未妊治療を専門とされている医師の方の見解をお尋ねすると、
いくらホルモンの環境が整っていたとしても、その数値により
精子が確実に精巣内にいるとは言い切れないとのことでした。(閉塞性は除く)
確かにLH・FSH・テストステロンに代表されるホルモンは、
造精機能に影響を与えていることは確かですが、
あくまでもホルモン検査による数値は、男性未妊の原因を探る上での
判定材料の一つであり、精子が「いる・いない」の判定基準ではない
ということをご理解されていたほうがいいのではないかと思います。
実際、性腺ホルモンや男性ホルモンが正常値範囲内でも、TESEを受けて
精子や精子細胞が認められなかったという例もあるそうですし、
ホルモン値が異常値を示していても精巣内に精子や精子細胞が認められた例もあるので、
(我が家の場合もこれに当てはまります)
一概にホルモン値そのものが、精子がいるかいないかの基準であるとは言えないようです。
現段階では、何が原因で造精機能に異常が起こっているのかは
まだまだ研究段階といえるでしょう。
その内、原因特定が出来、治療法が見つかるのかもしれません。
まだまだ未知の分野であると言えると思います。 |
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最後に |
鍼治療に通ってみようと思われることは、男性未妊の症状の改善への可能性を
高めるためにはいいことだと思います。
しかし、効能・効果が、確実に全ての人に対してあるとは言い切れないという現実があります。
また、通院するにあたっては経済的・時間的負担は少なくないと思います。
生殖医療そのものではありませんから、特にTESEに代表される精子回収術を
受けられる方の場合、その間、ほとんどの生殖医療を受ける機会はストップします。
いうなればその間も、時間経過を止めることはできませんし、
未妊治療は女性側にとっては年齢とも戦わなければなりませんので、
奥様が妊娠できる確率が下がるかもしれないというリスクも生じてきます。
これらのことを考え合わせて、通院する・しないは、
ご夫婦でよく話し合った上でご判断なさることをお勧めします。
また、実際に通うことを決められた場合も、
患者側が治療を受けたり、中止できる権利を持っているのですから、
施術者側に振り回されること無く、ご夫婦の意志で通院なさってくださいね。
そして、ご夫婦にとって最良の選択を選び取られることを願ってやみません。
※ この記事内のデータは、Elsevier社から内容の使用許可を頂いております。
参考ソース元:ELSEVIER
http://www.elsevier.com/wps/find/homepage.cws_home
Publication: Abstract from FERTILITY AND STERILITY, V84(1): 141-147,
Pei et al: “Quantitative evaluation of spermatozoa ultrastructure after acupuncture treatment for idiopathic male infertility”
(c) 2005 American Society for Reproductive Medicine |
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