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非配偶者間の生殖医療について
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非配偶者間の生殖医療を考える

私たちがTESEで採取することが出来た後期精子細胞のストックを
使い切った時点で、望んでいた二人の子供を妊娠・出産するという希望は断たれました。
ただ、私たち夫婦の間に、選択肢の一つとして、AIDという治療が残されていました。

治療を卒業することを決めるまでの間、その治療を行うかどうかを
時間をかけて話し合ったことがありました。

我が家の結論としては、その治療を行って子供を得るということは
却下となりました。
その結論を導き出すまで話し合ったこと、調べたことをまとめてみました。

非配偶者間の生殖医療を検討している方への参考になればと思います。

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非配偶者間の生殖医療について

非配偶者間の生殖医療はあらゆる未妊治療を行っても妊娠できず、
それでも妊娠を希望する場合に、第三者からの精子や卵子の提供を受けての
医療行為のことを指します。

男性因子の場合は、AID(非配偶者間人工授精)を代表とする精子提供による
人工授精やART治療でのとなり、
女性因子の場合は、卵子提供による人工授精やARTでの治療となります。
また、代理懐胎(いわゆる代理母出産)もこちらに含まれます。

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国内の非配偶者間生殖医療制度について

国内の非配偶者間生殖医療に係る規制は、日本産婦人科学会やJISART等の
学会による規制のみで、法整備が整っておらず、法制化されていません。
よって、事実上、規制はありません。

ただ、多くの産婦人科医が所属している日本産婦人科学会や
一部の生殖医療施設が所属しているJISART(日本生殖補助医療標準化機関)による
方針が定められており、その方針に沿った医療行為が行われているようです。

bluecat 日本産婦人科学会及び厚労省の見解
卵子提供による医療行為、非配偶者間のART(体外受精及び顕微授精)や
代理懐胎は認めておらず、非配偶者間人工授精(AID)の見解を述べているのみです。
(つまりAIDはOK)

bluecat JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の見解
精子・卵子の提供による非配偶者間体外受精は認めており、ガイドラインを設けて、
実施していますが、代理懐胎は認めていません。

精子・卵子の提供による非配偶者間体外受精に関するガイドライン
http://www.jisart.jp/110528taigai2.pdf

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非配偶者間の生殖医療が内包する問題

bluecat 法的な問題
上記により法律の整備については議論はされてはいますが、
具体的な法整備に向けてのあゆみは遅れており、実質的な規制はありません。
よって、法的な規制が無い為、医療側・患者側の倫理観に頼っているのが実情と言えます。

bluecat 精神的な問題
非配偶者間の生殖医療による治療を受ける場合、
ほとんどのケースでは、戸籍上はご夫婦の子供となるようです。
しかしながら、遺伝子的にはご夫婦どちらか一方の子供ではありません。

今現在はよくても将来的にそのことがしこりになる可能性は否定できません。
実際に離婚されてしまうケースもあるようです。

bluecat 産まれてきた子供のアイデンティティの問題
治療の結果、産まれてきた子供に対し、出自を明かすか否かの問題もはらんできます。
また、国内のAIDに関してはドナーの情報を得ることが出来ないのが現状です。

実際に、AIDで生まれてきた方は、ご自身の出自について知ることが出来ず、
苦しまれている方もいらっしゃるようです。

bluecat 倫理的な問題
第三者による精子や卵子の提供は、第三者の善意によるものであればよいですが、
商業的な要素も含んでいます。
金銭的な報酬目的による提供もありえると考えてよいでしょう。
国外では金銭的な報酬目的による提供が行われている事実もあります。

また、意図的に精子や卵子の選別が行われることによる命の選別もあります。
こちらもまた、国外では優秀な遺伝子を残したいという思惑、国内でも男女産み分けに係る
精子や卵子を選別しているということもあるようです。
(但し、遺伝上、重篤な疾患を抱える等の理由により例外はあります。)

よって、非配偶者間の生殖医療は、倫理面・法的な問題、精神的な問題等、
様々な問題を内包する医療行為となります。

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我が家で話し合った内容

先に述べたような法的な問題はほとんど話題にはなりませんでしたが、
精神的な問題や産まれてきてくれる子供の将来については、かなり話し合っていました

bluecat 精神的な問題について
AIDで生まれてきてくれる子供は、戸籍上は確かに、彼と私の実子となります。
子供が赤ちゃんの時は待望の赤ちゃんということで、
きっと、二人の子供として育児にがんばれることだろうと思います。

でも、子供はいつまでも小さい子供のままではありません。
やがて大きくなって、思春期を迎えた時に、様々な問題が起こる可能性は当然あるでしょう。
子供が起こしたトラブル等、問題に直面した時、彼は果たして父親であり続けることが
できるかどうか正直、自信が無いと言いました。
心のどこかで「どうせ、俺の子供じゃないし」って思ってしまうかもしれないと。

私もまた、子供のことで夫婦間がぎくしゃくしてしまうかもしれないという
可能性は否定しきれませんでした。
それはとても本末転倒なことではないかと思いました。

bluecat 産まれてくる子供の出自について
子供の出自についてですが、現時点では、AIDの場合、生物学上の父親は、
精子提供を受ける側、治療で生まれてきた子供が知ることは出来ないようです。
また、提供者側も自分が提供した精子によって子供が生まれているということは
知らされないようです。

では、子供本人に出自を明らかにするか、隠しておくのかの問題があります。
出自を早い段階で明らかにしておくことによって良い結果を生むかもしれません。
でも、きっと「本当のお父さんは?」というルーツを知りたいという欲求が
必ず出てくると思われますし、それを叶えてあげられる現状ではありません。
結果、本人が苦しむことにならないかと思うのです。

出自を隠す場合ですが、これもまた、二人が一生、子供に隠し続けることが出来るか?
と考えた場合、これも確率論になってしまいますが、恐らくは難しいと思うのです。
隠し事、それも重大な一生をかけて守り続ける秘密を保持し続けることって、
とても難しいことだと思います。
秘密はどこからか漏れてしまうというのはよくありますし、
意図せぬところから、子供に知られてしまった場合、子供のアイデンティティはどうなるだろう。
土台になる部分が崩れてしまった場合、その子は乗り越えてくれるだろうか?
最悪の結果にならないだろうか?と我が家では、懸念点はいくつも出てきてしまいました。

bluecat 倫理的な問題について
彼と一緒にある産婦人科医のブログを閲覧していた時に、
医療者としてARTという治療についての気持ちが書かれていました。

確かに子供を授かる手立てとして高度生殖医療は有効な手段かもしれない。
しかし、そこには人間の手で精子や卵子を操作するという一種の命の選別があると思う。
それは、命を人間の手でデザインするということではないだろうか。
というような内容でした。

確かにARTでは精子種別、卵子種別は行われます。
しかしながら使用する精子や卵子は自分たち夫婦から採取したものなので
矛盾しているようですが、子供を得るという治療法としては有効だと思います。
使われなかった精子や卵子はどうなるの?と思うと、複雑な心境ですが。

しかしながら、非配偶者間での場合、個人的にとても不自然な形ではないかという
気持ちが二人とも払拭することが出来ませんでした。

bluecat AIDという治療の確率について
上記の精神的な問題や子供の出自の問題がクリアになったとします。
では、治療の成功率の確率はというと、私の年齢では確率は10%を切るようです。

4度に渡ってICSIを行った経験を踏まえると、数回で治療が成功すればいいけれど、
毎回、また治療成功への希望と失敗した時の絶望を繰り返し味あうことになってしまうので、どうしても踏み出すには勇気が必要となります。
それは、彼にとっても私にとってもそれを乗り越えてまで治療をしようとは思えませんでした。

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結論

妊娠・出産することが未妊治療にとってはゴールかもしれない。
でも、そこから今度は一人の人間を育て上げていくというスタートが待っている。
一人の人間を育てることに責任を最後まで負うことが出来るのだろうか?
ということを何度も何度も話し合いました。

話し合いを続けていく中で、一時的な自分達の欲求を叶えることだけで、
これだけ予想できそうな、簡単に乗り越えられそうに無い問題を抱え込むことは
避けたいというのが正直な二人の気持ちでした。

そして、上記の話し合いを続けていくうちに、私たち夫婦は、
どうしても子供が欲しいわけではない。という結論に達しました。
夫婦で仲良く暮らしていければそれでいい。それが私たちが導き出した結論でした。

どうしてもどんなことをしても子供が欲しいという気持ちは、よく分かります。
当たり前のことが当たり前でないということは本当に苦しくて辛いです。

でもその気持ちにどうぞ、捉われすぎないでください。

一度冷静になってみる、治療の現場から少し遠ざかってみる、
その上で、それでもどうしてもというのであれば、
ご自身のパートナーとじっくり話し合ってみてください。

そして、様々な問題を乗り越える覚悟が出来、
お二人の意志が非配偶者間の生殖医療を選択すると決断されたのであれば
それはお二人にとって最善の選択肢だと思います。

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