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blueneko Primary Examination

センター試験    ホルモン検査1回目

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治療開始

本格的に鍼治療が始まった。
前回は初診のみの診察日に治療院に伺ったし、慣れない初めての場所への
長距離移動と初診日ということであまり周りを見渡す余裕もなかったのだが、
二回目ということもあって多少周りの患者さんを観察(?)する余裕もあった。

治療院に到着すると既に何組かのご夫婦が、診察待ちをなさっていた。
夫婦共に治療を受けられるのか、それとも片方なのかは分からなかったが、
ご夫婦揃って待たれているのを見て
皆、「未妊」という事実、未妊治療というものを二人の問題として
捉えていらっしゃるのだなと思うと暖かい気持ちになった。
自分たち夫婦もその一組であるというのは間違いないけれど(笑)

かつての私が経験した男性側の協力体制が整わないという悩みから考えると、
何組かのご夫婦はきっとその状態を乗り越えられて治療院に来られているのかなと
思いを馳せると感慨深かった。

夫婦それぞれ歩みのペースが違っていても
いつか未妊治療に向かい合う全てのご夫婦が二人で手を取り合って
共に歩んでいけると待合室で診療待ちをされているご夫婦を見るとそう感じる。
今は夫婦の歩みの歩調が違って苦しいと感じていても、きっと言葉を尽くして相手に
語りかけ続けることと時間が解決してくれるはず。
だから、今、歩調が合わずに悩んでいる方に希望を捨てないでいてね。
きっと越えられるよとそう伝えたい。
未妊治療という治療は夫婦の絆というものを考えさせられる治療だと改めて思った。

30分ほど待った後、診察室に呼び入れられ、院長先生と少しお話しをした。
今回から本格的に治療を始めることと、前回伺ったときに説明されたことを
再度説明され、彼は処置室になっているパーテーションの陰に消え、
私はしばらく待合室で待つことになった。

待合室で待つこと40分ぐらい経った後、彼が診察室から出てきた。
戻ってきた彼からの話だと、睾丸に心電図をとるときに使用するような
パッドをあてがわれ、低周波の電磁治療と、鍼治療を行ったそうだ。

鍼は前回私が見学させていただいた時と同様に、腕、足、頭に鍼を
打たれたそうだ。一番多く打たれたのは足らしい。

彼曰く、鍼治療が終わった後、少し違和感が残るそうだ。
確かに彼の歩き方は少し変だった。
痛い?気持ち悪い?と尋ねると
足が自分のものではないような感覚ではあるけれど、不快感はないとのことだった。
それを聞いて安心した。

どのぐらいの期間、通院することになるのかは分からないけれど、
しばらくの間、週末は長距離ドライブとなりそうだ。

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カミングアウト

夏休みに私の親に未妊の原因を告白した。
毎年恒例のお盆の墓参りを行うために祖母の家に行く。
その初日の夜、母と彼はお酒を飲みながら、私はお茶をしながら
色々な話をして盛り上がっていた。

母が私にカルシウムをたくさん摂っておきなさいよ。
いつでも赤ちゃんが迎えられるように身体の準備をしておきなさい。
と、「孫はまだか」という軽いジャブを打ってきていた。
私はまたかよと思いながらそうだね〜。といなしていたのだが、
彼が突然、改まった口調で母に我が家の未妊の事実を告げた。

実は、僕、無精子症だそうです。つまり精液中に精子がいない状態です。
睾丸を切って精子を探して見つかったら顕微授精という方法を使って
治療をしないと子どもは望めないんです。
と、母に告げた。

母は目を丸くして絶句した。
しかし、彼はかまわず続けた。

今、鍼治療に通っていて改善策をとっているところです。
まだまだお母さんに子どもを見せる日は遠いですが、
二人で出来るだけのことをしてがんばっているので、
どうか、みいにプレッシャーをかけるのは勘弁してやってください。

しばらく重い沈黙の後、母は言ってくれた。
そう・・・。そうだったの。大変なことが起こっていたのね。
気がつかなくてごめんなさい。
二人が出来るだけのことをしたいというのなら、
できるだけのことをしていくといいよ。でもね、治療だけに拘らないでね。
私は二人が仲良く、幸せな人生を歩んでくれること、それが一番嬉しいのよ。
無理はしないでね。

その言葉を聞いてほっとした。
ずっと親に言えないでいた負い目のようなものがすっと消えた。
まだ、彼の親には告げてはいないけれど、
母からのエールは私たち夫婦にとって力強かった。

母は、高度生殖医療には偏見を持っている人だったので言いたくないというのが
常にあったのだが、意外と自分の娘夫婦がそれをしなければ子どもは無理という
事実を突きつけられて気持ちを切り替えたようだ。
よかった。母が理解しようとしてくれて。

彼になぜカミングアウトしたの?と尋ねたら
これ以上、現時点で何の原因もない私に色々と言われるのが嫌だったから。
俺が原因なのにみいが責められなければならないのかと思うと、つらいからね。
みい母なら分かってくれる、受け止めてくれると思ったから
素直に事実を言っただけと笑っていた。
自分の親ならそうはいかないから、せめて私の親には知っておいて欲しいと
思ったらしい。
酔った勢いもあるけどと、彼は言うが、彼がそこまで考えてくれていると思うと
その優しさが嬉しく、私は恵まれているんだなと思っている。

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センター試験

院長先生が治療を始める時に仰っていたことを彼は真剣に取り組んでくれていた。
あれほど鍼治療に行くことを躊躇していたことを考えると
彼の真摯な態度に驚くばかりだった。
男性は一度腹を括るとこんなに前向きに取り組めるものなのかと驚いた。

時々二人でスーパー銭湯に出かけるのだが、鍼治療を始めてから、
彼は他人の股間を観察することに目覚めたようだ(笑)
自分の股間と比較しながら観察するらしい。

鍼治療を始めて1ヶ月ほど経った時、
彼は少し睾丸が下がってきたような気がすると言い出した。
言われてみればそんな気もする。
院長先生に尋ねてみたが、そこまでは分からないと苦笑されていた。

そしてこの月の治療をこなしたら、ホルモン値検査をしてみようかと提案された。
初診時に治療開始2ヶ月後(大体8回ほどの通院が目安)に
一度ホルモン検査をすると仰っていたので、その予告となった。
ただ、ホルモン値は、体調によって左右されるので、
体調のいい日を選んで検査をしようということになった。

院長先生は期待していていいよと嬉しい言葉をくださった。
私たち夫婦にとって院長先生の言葉は心強く、頼もしかった。
きっといい方向に進んでいるに違いないと先生の励ましを聞くたびに安心していた。

最初に我が家の未妊の原因が発覚した時のどん底の気持ちから考えると
二人とも随分楽観的になってきたような気がする。
鍼治療に行ってよかったと、彼はそう言って笑う。
少しでも彼の気持ちが前向きで明るくなれるのならそれだけでも効果ありだと
私はそう思っている。

そして、あっという間に2ヶ月目が終わろうとしていた。
具体的にホルモン検査を受ける日付も決まった。

この間に彼の話だとだんだん、鍼を打つ場所が変わってきているらしい。
たまに皮膚が薄いところも打たれたりしているようで、
うっすらと血がにじむこともあるみたいだ。
そして、足の指に打たれることもあるらしい。
たいてい足の指は、磁気治療のパッチみたいなものを貼られるのだが、
くっつきが悪いらしく、ついに業を煮やした先生が鍼をうったらしい(笑)
足の指への鍼は相当痛いらしい。
彼は顔をしかめてぶつぶつ不満たらたらだった。

そしてホルモン検査日当日を迎えた。
いつも通り鍼治療を終えた後、鍼治療院から頂いた紹介状を持って、
治療院から程遠くない内科でホルモン検査を行った。
結果は1週間ほどで分かるらしい。
楽しみなような不安なような複雑な気持ちで帰途についた。

やはり検査結果待ちというのが一番心臓に悪くて何とも居心地の悪い時間を
過ごすことになる。
鍼治療院の先生は大丈夫と仰っているので、
それを信じて穏やかに一週間を乗り切っていこうと思う。

思いを馳せて しろくろねこの家
Copyright(C) Tomo Siraki
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